くらいなかけぶかいぞうにふれるかんじ
美容室で髪を切ってもらっているときに、眼をとじたまま、あの、髪を短くしてもらってから、なんだかふしぎなことばかり起こるんですよね、うまくいえないんですけど、なんていうのかな、そういうのってあるんですかね、決心して髪型を変えたらじんせいがちがうようになるって、うーん、でもうまくいえないな、と眼をあけたら、美容師のひとは向こうでなにかを探していてわたしひとりがしゃべっているかたちになっていた。
でも、なんだか、ほんとうにふしぎなことばかりおこるのでさいきんずっとゆめのなかにいるかんじだ。ひとはときどきじんせいのふしぎなエアポケットにはいりこむのかもしれない。アリスみたいに。
でもわたしには追いかけるうさぎもいないのでゆらゆらとはあるかない。不思議なあるきかたもしない。できるだけきちんと歩こうとしている。きちんとしたひとになろうとしている。風で髪はすごいかんじになっている。でもきちんとあるく。もう短いのでこわいこともない。どれだけ乱れてもかまわない。
それでも交通事故にあうと困るので車と信号はちゃんとみている。あなたとはなすときもそう。あなたの眼をちゃんとみている。あなたはあなたたちになってつぎからつぎへとやってくる。それでも前方からつぎつぎとやってくる眼をちゃんと眼でみてわたしははなす。車が通り過ぎて信号をわたる。ひだりとみぎをみて、きちんとわたる。現実。
現実とは、車と信号とあなたの眼のことではないかとおもう。