あかるくなろうとおもって無花果のパン食べて
女の子と仲よくなってびっくりしたことのひとつに町からおいしいパン屋さんをみつけてくるというものがあった。僕が何年もこの町に住んでいたのにまったくしらなかったパン屋さんをあちこちからみつけてくる。焼きたてのおいしいパンばかり買ってくる。長葱がまるまる入ったパンや枝豆とソーセージが入った堅くがっしりしたパン。僕はどんどんふとっていき、ある日、ふとったゆびとふとった声とさらさらの髪の毛で、ぜんぶパンなのかも、愛とかはまあいいとして、と言ってしまう。かの女は窓際でひかりを浴びながら無花果のパンをちぎりちぎり食べている。「なんかさ、あなたって、大きくなったり小さくなったりしてるね。ふしぎの国?」とまるまるとふとった僕に言う。