或る日曜日わたしはとつぜん感想をいいたくなってしまい部屋の壁をおしつづけもうひとつの世界への扉を開ける

こどものころ、テリー・ギリアムの映画が大好きだった。『バンデットQ』も『バロン』も。

船のような巨人の帽子、性格は乙女の怪力大男、首だけの好色な王様、腹に人間たちを住まわせる化け鯨、時空を超えるえらそうなこびとたち、個性的な配下を従えたほら吹き男爵。

でたらめで、むちゃくちゃで、ひっちゃかめっちゃかで、でも、ある日曜日、とつぜん風がながれこんできたように、もうひとつの世界へのとびらがひらく、そういう映画だった。

真夜中のこども部屋に横柄な6人のこびとたちと馬に乗った騎士がとつぜんあらわれる。そして、巨大な魔王の顔も。逃げまどうこびとたちはこども部屋の壁をいっせいに押しはじめる。部屋はひかりを放ちながら奥へ奥へとどんどん伸びてゆく。魔王が追いかけてくる。こどもは壁を押すこびとたちをおっていっしょに逃げる。時空の風が吹いてくる。こども部屋の壁を押して押して押しつづけてたどり着いた場所は、1796年のイタリア。

『バンデットQ』のさいご、消防士のショーン・コネリーがやってくる。どうしてショーン・コネリーが消防士なのかは誰にもわからない。家は爆発し、魔王のかけらが世界のあちこちに転がりだす。両親はどこだろう。姿がみえない。消防士の謎のウィンク。世界は確実に滅んでいる。でもなんとなく、わたしたちの日曜日がはじまってしまう。また時空の風が吹きはじめている。さあ、扉。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター