四つん這いで暮らす世界が終わるなら

すごくセクシーな女の子からじっと眼をみつめられて、「あのね、絵を描いてるときね、どんなキャラクターでもね、口を忘れたときは、3を書いておけばなんとかなるのよ。3よ」と言われたことがある。「わすれないでね、わたしのことを」

そのときわたしのくちびるも3になっていたのかどうか。

朝の四時にデニーズに向かう。くらいのかあかるいのかわからない綿のような雲のましたをあるく。音や光がくぐもっている。遠くなのか、近くなのか、皿のかちゃかちゃする音やバイクのエンジン音がする。杖をついたおじいさんがむこうからやってくる。浴衣姿の。このまま歩いていくとすれちがうことになるだろう。

わたしはすれちがう。

わたしはたぶんアイスクリームとミントの葉ののったパンケーキを食べるつもりでこんなにあるいてるんだと、おもう。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター