おすもうさんのテレビをつけて毎日ねむる

さいきん、ねむるときに、すもうのテレビをつけてねむっている。

ぱしーんぱしーんと肉と肉が打ち合い響きあう音が、まるで森のなかで斧で木を切っているような音で、ふかく、谷の底のような感覚でねむることができる。

音がとってもよく響くふかい森で、おおきな木を切り倒そうとするおじいさんが、なんどもゆっくりと斧を木の腹にうちこんでゆく。ぱしーん、ぱしーん、と。おじいさんの犬はかたわらでじっとそれをみまもっている。その木とおじいさんと犬を取り囲むようにして、森いっぱいに無数のおすもうさんたちがおすもうさん同士でゆっくりとおおきくひろくあつい肉と肉をうちこませ、くいこませ、同じ音を打ち鳴らしてゆく。ぱしーん、ぱしーん。

おすもうさんたちはどんどんふえてゆく。

わたしはじぶんがふかい森のおくでひとつの巨大なまるになったようにかんじる。わたしはねむる。ぱしーん、ぱしーん。おすもうさんと森は似ている。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター