すべての電話を総括したような
また猫と電話させてくれるという。うれしい? というので、うれしいよとても、という。でも、あのね、こないだ、そういわれて電話でいっしょうけんめい猫に話しかけたけど、彼女ひとこともしゃべらなかったよ、にゃあともいわなくてね、ふーとかうーとかもいわなかった、よく爪きられるとき、うーっていってたけど、うーともいわなかったけど、ほんとうに猫がそもそも電話したいなんていうんだろうか、ときくと、電話したがってるという。
もしもし? というと、やっぱり黙ってる。やっぱりかあ、とわたしはおもう。にゃあ、とすら言わない。試しに、にゃあ、にゃにゃあ、と小声でいったが、とくになんの反応もない。わたしがひとりでおろかを直進しただけだ。いままでにゃあなんていったこともなかったのに。
あのさ、やっぱりもういいよ、前回とおなじだよ、となんとなく飼い主にそれとなく話しかけたが、だまってる。うん、も、にゃあ、もない。わたしは冷たいテーブルに静かにうつぶせになったままのiPhoneを思い浮かべる。そこからわたしの声がちいさくもれている。
にゃあ、と。