きらきらの反対ってぼそぼそ?

わたしは海外ドラマシリーズの「名探偵モンク」が好きだったのだが、強迫神経症で不自由な思いばかりしているモンクにとって街をなにげなく歩いているひとはぜんいんきらきらしてみえる。

わたしもバスに乗っているとき、乗車してくるひとたちをみては、なんてみんなきらきらお金を払ったり、PASMOをかざしたりしているんだろうと思った。

電車に乗っているとき、車掌さんが走ってきて、きらきらしているなあとおもった。車掌さんがもうひとりの車掌さんに「あっち?」ときくと、「あっちでいいとおもう? おい、あっちか?」ともっと奥にいる車掌さんにきいた。手前の車掌さんも奥のほうの車掌さんも、みんな、きらきらしていた。わたしは車掌さんってこんないっぱいいるんだとおもった。わたしひとりぼそぼそしてるんだなあとおもった。同窓会に行けなかったり、誘いを断ったり、わたしひとりぼそぼそしているなかを、「おいやっぱこっちだ! こっち!」ときらきらたちがまた走ってゆく。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター