十月に脳がアクセスするかんじ

「十月ってなんかぼんやりして話してることがわかんなくなるよ。あったかいんだかさむいんだかわからない。脳もね。あたたかい脳なのかさむい脳なのか。さいきんそればかりだよ。あなたの話すことはなにもわからないって。なにをいってるかよくわからないって。ほろびるぞこのまんまじゃ」「でもね、たとえばだけど浦島太郎がくれた箱もあるし、くれなかった箱もあるでしょう」と言うので、「どういうたとえなのそれ? わからないよ、あなたのいってることも。みんな、ストローをくわえるのが好きで、ストローをくわえるのがきらいなひとなんていないってこと? ほ、ほろびるよ、これ」と言うと、「いや、あのね、ねえねえ、ええと、あ、そうだ」とまた箱の話に。

十月におたがいわかりあえないままで。十月の脳で。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター