水滴ひとつでオズになってゆく

「オズの魔法使い」って、ドロシーが、帰りたいここにいたくない、ってずっと言い続ける物語なんだよなあ、とおもう。ドロシーの目標は、家のあるカンザスに帰ることだ。目的地は、今いる場所のオズの都ではなく、カンザスだ。かのじょは、なんとか帰ろうとしている。仲間ができても。

たとえば好きなひとと行動していて、そのひとはずっと、帰りたいここにいたくない、とおもってる。そのときじぶんはどう思うのかなあと思ったりする。帰りたがってるなあ、なににつけても帰りたがってるなあ、とそばにいて思っちゃうかも。

念願かなってルビーの靴でオズの国からカンザスに帰ってきたドロシーは、家ほどいい場所はない、と歌いあげる。ぜんぜん、ぶれない。よっぽどカンザスが好きだったんだなあ。

オズの国のひとが聞いたらちょっとつらくないだろうか。でも、かれらは、脳が、こころが、勇気が、手に入ったからなんとかやっていくだろうか。かしこく、やさしく、たくましく、なんとかやっていってほしい。オズの国だってとってもいいとこなんだから。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター