わたしはしあわせですっていってみろ

すごく、とっても、かんたんな文が、文学になるしゅんかんがあったらいい。

木がある。かれはまだこない。ふたりだけ。あなたが「わたしはしあわせですっていってみろ」とわたしにいう。わたしは「わたしはしあわせです」という。あなたは「会いたかった」という。わたしたちはだきあう。わたしは「わたしはあんまり会いたくなかった」という。「でもまたおれたちここにいるだろ」とかれがいう。「また会えたんだ、おれたち」「なにをしたらいいの?」「わからない」

あなたはときどき臭う。かれはまだ来ない。わたしたちは待っている。わたしはきのう土のうえでねむった。ときどきこのあたりは火のにおいがする。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター