木の馬を降りて「未来見えてたの。」

むかしの写真がでてきて、こんなめがねかけてたんだなあ、とおもう。仮面のような。蝶ネクタイのような。どうなってんだこの眼鏡、とおもう。でも過去は変えられない。わたしがわすれても変えられない。わすれてもそれはある。そしてときどき未来にやってくる。髪あらってるときなんかに。

  髪洗うときアメリカを忘れてる  樋口由紀子(『めるくまーる』)

アメリカを忘れてること。でもアメリカを忘れてることに気づくこと。わたしのなかの見えない部分にきづくこと。眼を閉じて、髪を洗っているときに、わすれてるかたちでおもいだすこと。

このとき未来みえてたの、と言われて、ぜんぜん、と答えた。このめがねかけてたとき未来みえてたの?

ぜんぜんだよ。

いまはどう? なんてきかれなかったけれど。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター