ひとに眼鏡を外して貰う眼鏡買うとき

結婚式の日の朝、ひととさよならをしていたら遅くなって、遅れるかたちで新幹線に乗った。式場についたら、もしこなかったらお父さんはあなたを勘当していたとおもうよ、と言って、うそかもしれないし、ほんとうかもしれない、ほんとうかもしれないきがした。

ひととさよならするときってなんだろう。そのさよならをひとがみている。渋谷駅でわたしたちがさよならするようすをひとが歩きながらみていた。みているというのでもない。なんかあるなあ、というかんじでとおってゆく。わたしはスーツを着ていた。スーツ着るんだ、とそのひとが言った。それから、あくしゅをして、ぱっとわかれる。

眼鏡を買うとき店のひとから眼鏡を外してもらう。ひとから眼鏡を外してもらうことなんてなかなかないよなあとおもう。買ったばかりの眼鏡はよくみえる。みえすぎるくらい。歩いてみてください、と眼鏡屋のおねえさん。わたしは飛行機の発着場みたいな感じで手を伸ばしつつよろよろ歩く。

どうですか。ええ。いい感じです。いい感じだとおもいます。

見てください。歩きながらよく見てみてください、あなたのまわりを、まわりのひとつひとつを。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター