詩と愛と光と風と暴力と

むかし、女の子と車のなかでけんかしていたら、女の子がどんどん道をまちがえていき、わたしは助手席でだまって、知らない建物やスーパーや森や車や犬や病院や理容室のくるくるをみながら、わたしたちはこれからどこへゆくんだろう、どこもいけないけど、とおもったことがある。

夜の8時くらいで、新潟で、泣くとぜんぶの灯りがにじむような時間帯で、車のランプが、魂を送るように列になってひかっている。

どうしてけんかしたのか。ソファーから女の子は顔を半分だけだしてじっとわたしをみつめていた。

夢だったのではないか。ときどき間違えた夢をみているようなきがする。間違えた夢のなかで間違えた場所の間違えたわたしが間違った怒り方をしている。わたしはその夢のなかで、うー、とか、わー、とかうなるのだが、女の子は、やぎもとくんそれってぜんぜんこわくないよ、と言っている。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター