ちいさいほんと月をかたづけ家族する
映画『月と雷』を見ると、角田光代さんの〈よるべない関係性〉がよくわかる。
月と雷のようにあてもなくふわふわ集まったり離れたりする人々。
婚約者がいるにも関わらず、子どもの頃の〈遊び〉を思い出したように別の男と〈ふつう〉にセックスする主人公。「もし婚約がだめになったら、あなたのせいだからね」
でも、主人公はおさないころからじぶんを知っている相手のうえで、つよく、たくましく、うれしそうだ。
家族でもなかった。恋人でもなかった。親子でもなかった。きょうだいでもなかった。まだこの世界には、かれらをいいあらわすことばがなかった。それでも、ひとつの屋根のしたに集まってしまったひとびと。月と雷。
わたしたちは、家族している。