ちいさいほんと月をかたづけ家族する

映画『月と雷』を見ると、角田光代さんの〈よるべない関係性〉がよくわかる。

月と雷のようにあてもなくふわふわ集まったり離れたりする人々。

婚約者がいるにも関わらず、子どもの頃の〈遊び〉を思い出したように別の男と〈ふつう〉にセックスする主人公。「もし婚約がだめになったら、あなたのせいだからね」

でも、主人公はおさないころからじぶんを知っている相手のうえで、つよく、たくましく、うれしそうだ。

家族でもなかった。恋人でもなかった。親子でもなかった。きょうだいでもなかった。まだこの世界には、かれらをいいあらわすことばがなかった。それでも、ひとつの屋根のしたに集まってしまったひとびと。月と雷。

わたしたちは、家族している。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター