苺が挟まってるきがするんです

むなぐらをつかまれたことってあったかなあと思い出してみる。すごくへいわなときに。たとえばもてなされているときに。立食のときにバヤリースをもらいにいったときに。あたまをさげるとウェイターのひとがバヤリースをそそいでくれる。たっぷりとしたオレンジの色。前のほうでは歓声があがり、あちこちに花があり、ひかりがあふれている。きれいな服をきたひとたちがゆきかっている。もともとさん、あのね、と話しかけてくるひともいた。わたしもわらいながら聴いていた。楽しい話をしてくれるので、聴き入っていた。みんながへいわなときに、いままでむなぐらをつかまれることあったかなあとなぜか思い出している。暴力の経験をおもいだしている。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター