こんどこそこっちにこいよキリンの目

むかし、上野動物園にデートにいったときに、やぎもとくんはいつもこんなかんじなの? ときかれたことがある。

目の前ではアメリカバイソンがうんちをふりまいていて、なにかのメッセージのようにも見えた。どうなってるんだろう。

そのころはともかく睡眠時間がなくて、どこでも立ったままねむっていた。駅でも、公園でも、でんしゃでも、ホテルのロビーでも、木のしたでも。「どこでもねむれるわけじゃなくて、いつもねむたいんだよ」とわたしは言った。「なんにもたりない」

風とともになまぐさいかおりが運ばれてくる。「ペンギンだね。ペンギンにちかづいている」とそのひとはわかりきったことをいう。あるいていた。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター