「再会に入りますよ」あなたを知っている

禅の公案に、「片手で音を鳴らせ」という問題があった。両手じゃなくて、片手だけで拍手しろ、と。

たしかひとつの答え方は、片手を無言でつきだすだったとおもう。

そこには、鳴るか鳴らないかが問題じゃないというつきぬけたかんじもある。鳴らしても、鳴らさなくてもどっちでもいい。音ってそういうもんじゃないんだ、と。

だからもっと言えば、出題してきたひとを無言で殴ってもいい。そのパンチが正解だったりもする。ことば、じゃなくて。禅ではよく答え方として相手を殴ったり斬ったりしているけれど。

なにかをしなくちゃいけない、どうするか、と迷ったとき、しなくていい、という答えももっていたい。どっちにするべきか、というときに、どっちでも正解、という答えを。

石にかつんとつまずいたときに、その「かつん」がとつぜん答えになってしまうこともある。ことば、じゃなくて。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター