うすくらがりで観察する巨人の手

むかし、たいへんっ! 押入に隠れて! と言われて、押入でじっとしていたことがあった。こんなジャックと豆の木みたいなことがじんせいであるんだなあと思った。押入でしずかにしゃがみじっとしながら、ともだちたちは今なにをやってるんだろうとかんがえた。お金をたくさん稼いでいるのかなあとか熱いコーヒーを飲みながら打ち合わせをしているのかなあとか。

押入のそとから、あかるく、くらく、話し声がした。じっとしてるうすくらがりのなかのくうきとひかりのこまかいながれ。この押入どこからか風が洩れてる、とわたしは思った。ジャックはあのときどんな風をかんじていたか。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター