ひきだしのてがみの歌声が凄い

たとえどんなところにしまいこんでも、しまってもしまっても響いてくる声がある。うつむいていても、しあわせそうにしていても、その声はひびいてくる。だれかといても、ひとりでいても。

村上春樹さんの「中国行きのスロウ・ボート」にはこんなセリフがある。「大丈夫、埃さえ払えばまだ食べられる」

村上春樹さんの小説ではいろんなとりかえしのつかないことが起こるが、それでもまだ世界はつづいていく。これで終わりだとおもっても世界には「まだ」続きがある。ここにあなたが立った以上はちゃんと最後までみてね、と。あなたが終わったと思っても、まだ終わらない。「大丈夫、埃さえ払えばまだ食べられる」の世界がつづいていく。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター