星空に向けて生み落とされる駄々

さいきん久保田紺さんの句集を読んでいたら樋口由紀子さんと小池正博さんがこんなことを書いていた。

「生きていくうちにはどうしようもないものが必ずある。なんだかわけのわからない事象にも出会う。最後まで割り切れないものが残ったり、どういえばいいのかわからない感情だってある」と樋口由紀子さん。「人は天使でも悪魔でもなく善悪のグレーゾーンで生きている。どうでもいいことはどうでもいいのであり、しかし本質的なことだけで生きていけるのかというと、そうでもない」と小池正博さん。

なにかを決断できないじぶんのままでグレーゾーンに踏みとどまること。生きるだだをこねること。

駄々をこねる、というのはふつう悪いこととして扱われるんだけれど、その場にとどまることでもう少し今のわたしのことを考えてみたい、ともとらえることができるかもしれない。もうちょっとここにいたいんです、なんかきになるから、と。わたしにとってなんかだいじなものがありそうなんです。

その駄々がだんだんかたちになり意味になり天空に飛翔していく。表現、と呼ばれるものになるかもしれない。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター