桜桃忌おんなじ服のひとと会う
わたしは卒論が太宰治だったのだが、よく太宰のことばを見ては勇気をもらっていた。
生活。
よい仕事をしたあとで
一杯のお茶をすする
お茶のあぶくに
きれいな私の顔が
いくつもいくつも
うつっているのさ
どうにか、なる。
太宰治『晩年』
なんで、「どうにか、なる。」って読点を入れたんだろう、と思う。なる、の前にいったん踏みとどまる。どうにかならないかもしれないといっしゅん思う。でも、そこをあえてゆく。読点をこえて、「なる」のほうに飛び込んでゆく。よい仕事も、一杯のお茶も、あぶくも、きれいな私の顔も、ぜんぶこえて、「なる」に向かう。ならないは、ない。
『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
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『週刊もともと予報』は2019年まで毎日更新で話題になった『今日のもともと予報』に引き続いて始まりました。
川柳作家・柳本々々さんが感じたことを句とエッセイにして週に1回、綴ります。
イラストレーターの安福望さんの温かなイラストと共にお楽しみください。
『週刊もともと予報』特集ページはこちら
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┃この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞 安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞 安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター