ペガサスとユニコーンの尾を確認す

夏休みの最後の日にわたしはペガサスとユニコーンの違いを確認した。巨大なイオンの六階にあるおもちゃ売場。ドイツ製動物フィギュアがびっしり並んだコーナーにわたしはいた。サーティワンアイスクリームのマシュマロとアーモンドの入った泥道のようなロッキーロードを食べたあとだった。こんな日がじんせいの終わりの日でも幸せだろうと、おもう。

おもちゃ売場に立って、ほんとうによく手にとって見た。イメージではふわっとしていた尾もよく違いを確認した。夢ではいつも見えなかったところだ。これがみたかったんだよ。こどもたちがわたしの背中に鞄をぶつけながらとおりすぎていった。大きなけわしい石のかたわらを通るさかなのように。め、もよくみておいた。あなたの文章って、め、が出てきすぎなのよ、と言っていたひとがいた。ふうん、め。

ペガサスってどんなめしてたっけ? ユニコーンのめは? とこの夏、ときどき、汗をぬぐいながら、思った。もういい年なのに、思春期のようににきびができた。だれのファンタジーなんだろう、わたしの今は、と、ぜんぜん思ったりしない。

そうして、それがいつかの8月31日のわたしの日記になった。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
 1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
 1981年、兵庫県生まれ イラストレーター