ハッピーエンド船にのるとこ思い出す

返せなかった贈り物をいつか返すためにずっと生きつづける。そういうじんせいもあるのかもしれないなあと日曜日に街をあるきながらおもう。うどん屋さんに入ってチーズカレーうどんを注文するときに、それいい時計ですね、とうどん屋のお姉さんからライナスの腕時計をゆびさされる。かわいい、いいとけいですね。

すごろくのいちばんさいしょのコマに、すけっととうじょう、と書いてあるきがする。そのコマからじぶんのじんせいははじまっているから、そんなふうなところからさいころをふったから、わたしは、ずっと感謝しながら、どこかで酔っぱらってたおれているときも、それでもわたしはずっと感謝しながら、そういうかたちで祈りながら、いきてゆくきがする。返せなかった贈り物がなんてたくさんあるんだろうとおもう。天井があっても星があることはわかってる。いまいきてることにすごくおどろいてから、ねむる。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
 1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
 1981年、兵庫県生まれ イラストレーター