また二人。なんども地球なんだけど

さいきん刊行された竹井紫乙句集『菫橋』の最後に紫乙さんとの対話が載っている。

  でも日々、生きていくしかどうしようもない。…そのどうしようもなさ、という地点からの書いたり、読んだり、ですね。
  竹井紫乙「対話 ぼれろ」『菫橋』

どうしようもないことをどうにかしないでどうしようもないこととして生きていく。それをくりかえして生きていく。そういうところからも生きていけるんだろうか。そんなしおとさんとの対話だったと思う。終わり、ということばがたくさん出てきたなあ、とあらためて振り返っておもった。

こないだドラマ「時効警察」の再放送を見ていたら署長の岩松了さんがこんなセリフを言っていた。

「ひとはどうして間違えるかわかるかい? それはなにかを終わらせるためさ」

二十代の頃にもわたしはこのセリフに出会っていたんだと思う。ひとは間違え、なにかを終わらせ、また次のはじまりにむかう。終わりは終わりなんかではないが、しかしその終わりはひとつひとつかかえて生きていかなくちゃならない。終わり1や終わり2を抱きしめて生きていく。

岩松さんは「時効警察」でこんな終わりのセリフも言っていた。いつも緊張する場所に向かうたびにこのセリフを思い出している。

「はじまれば、終わる」


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
 1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
 1981年、兵庫県生まれ イラストレーター