なんでもないひだな なんでもないひだね 星

17歳くらいから書くことの真似のようなことをはじめて、いろんなことから逃げてはきたけれど、書くことのまねごとのようなことからは逃げなかったのでよかったかなと大晦日の神社の火にあたりながら思ったことがある。連れ立って光に照らされているひとがいた。聖なるかんじがした。

 詩にできるのは
 あるときとても好きだったもの
 ……
 そんなものはもうどうなったってかまわないと思う
 その「どうなったって」が詩になる
 ほんとうにせつなくなるのは
 とても好きなものがそうでなくなる瞬間
   松下育男『現代詩文庫 松下育男詩集』

好きです! とむねをはることから詩や書くことがはじまるんじゃなくて、好きだったものがいまだに星のように彼方でちからづよく輝いているのをめにしながら理解しながら、それでも書き続けてゆくこと。いろんなものやことが遠くにあることもしっていること。あえないものやかなわないもの、ゆけないばしょ、なれなかったわたし。でもむねをはらないかたちでつづけられたこと。

あけましておめでとうの電話がかかってくる。なにしてる? いやなんにも。元気はないよ、いつものように、といってみたり。 でもいいことがありそうなきがする、りゆうもなく、ってわたしかあなたのどちらかがいって。どこかできっと、いちにちなんにもせずてをつないだままてれびをみているひとたちがいる。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
 1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
 1981年、兵庫県生まれ イラストレーター