鳥ってこわい 愛の話で追い払われる

あなたはすごくいやなやつだけれど、愛されてるね、と言われたことがある。なんの愛の話もしていないのに。愛されてるなんておもったことがなかったのに。すこしだけ、とつぜん、愛の話をされた。愛の話なんてこっちはなんにもしてなかったのに。愛されてないけどなあ、っておもうけれど、そういうふうに愛にかんすることで、みえてるばあいもあるのかなあ。ときどき、ひとと、なんでもなく話してるととつぜん、愛にかんする短い話がでてくる。ほんとうの愛についての話じゃないかもしれないけれど、でもどこかで少しだけ愛のまんなかにふれた話を。まあなんか、ふしぎなきもちになる、ふしぎでへんな、でもさいごおいはらわれる。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター