ずっとつづいてたバームクーヘンみたいな会話

映画『ジュマンジ』のことをふいに思い出す。

ゲームのジュマンジをしていた男の子は、升目の命令にしたがって、とつぜんジャングルに追放される。20年以上たって男の子は、よびもどされて、帰ってくる。おおきなからだで、ひげもじゃで、ロビン・ウィリアムズで。でも、男の子にとっては、きのうとまったままだから、女の子ときのうの会話をする。きのうみたいにきょうできる会話。男の子は、さいころをふる。ゲームを終わらせるために。街で暴走する動物たちをとめるために。じんせいをやりなおすために。時間の風が吹いてくる。

ふと会って、きのうみたいに会話できることがある。さいころをふるみたいに、ことばがでてくる。すなおにあいてのことばにしたがえる。からだはおおきくなってる。としもとってる。いろんなことをしってる。でもきのうみたいに会話する。とつぜんよびもどされて。ずっとつづいてたきのうみたいに。はなしはじめる。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター