「終わり?」「うん」そしてマヨネーズ

部屋がとてもすきだったころ、毎日学校も行かずねむっていたら、好きだった先輩が、やぎもとはこんなほんを読んでみるといいんじゃない、とヴォネガットの『猫のゆりかご』を勧めてくれた。よむといいよ。とても。

とても。

シリアスな世界の少しふざけたかなしいこの本のなかで、今でも思い出す好きなことばがある。世界が終わりに近づき、どんどんひとがきえていく(しんでいく)。わたしたちは、ふたりきりになっていく。わたしはいう。「今ほどこのことばが深い意味で言われることはないと思うよ」。わたしはりょううでを広げる。「やっとぼくたち二人だけになったね」

世界の終わりでいわれてとっても意味をもったことば。さいきんまた取り出して声にだして読んでいた。今回はこのほんのなかのこんなうつくしいことばが好きになった。
「だったはずなのに」


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター