たまたまのマクドナルド たまたま読んで覚えた言葉

一時期、マクドナルドのソーセージマフィンばかり食べていたことがある。10個くらい、早朝に、買ってきていたのではないか。ねむりかけながら、ソーセージマフィンをひとつひとつ食べていく。すごいチーズやすごいソーセージのあたたかいマフィンを。
こんなにたべるのってSFじゃないのか、とおもった。にんげん以外、とも。ますむらひろしさんのアタゴオルのおおきなふとった猫をおもいだした。あのせかいではいつも新鮮で不思議なことが起こる。不思議なことが鮫のように彼らのもとにやってくる。すぐに、ここに。

気づくと私は食べながら眠ってしまい、ぱっと起きると部屋いちめん、ハンバーガーのくしゃくしゃの包装紙だらけのお花畑のようになっていたこともあった。私の人生のこれが最後の風景なのかなあと思ったこともある。

でも、それは、たまたまだった。

今は穏健にマクドナルドを使って生活している。ソーセージマフィンとのつきあい方もマイルドになった。マイルド・マクドナルドといっていい。
そういう時期からどうやって抜け出して今こうやって自転車に乗ってるんだろうとおもうことがある。よくなってよかったですね、と言ってくれたひとがいた。そのひとはなぜかパジャマだった。ええ、まあ、と私はいう。「でも、ちょっとよくなってよかったですね」 ちょっとずつでいいですよね、ちょっとずつ。わたしのあたまのなかにはいつまでもそのひとがパジャマでいる。パジャマは毎日着るものなので、ぜんぜん不思議じゃない。
また、たまたま、ここにいる。ちょっとだけ、よくなって。よかった。たまたまのマクドナルドの話。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター