#11「選ぶ幸せ」 丸山朱梨

ショーウインドーにパンは無数に並べられ誰かが選ぶ幸せがある
まだ少し温かい手を放したらスイング・バイでどこまでも行く
聞いているのは音声で声じゃないZoomの向こうの君に似た人
満たすのも傷つけるのも君という不協和音も許されている
見えぬものの支配が続くこの国のWi-Fiパスワードいますぐ教えて
いつだってスカートの裾ひるがえし「ひゃっ」と笑いたいのだ女は
光射す方角見失うならば自らの闇深くして待て
茶畑に走る一路の溝のごときれいな筋の人でありたい

家族のかたち 丸山朱梨×木滝りま
ふたりのシングルマザーが、短歌→小説と連詩形式でつむぐ交感作品集。歌人の丸山朱梨と、脚本家の木滝りま。それぞれの作品から触発された家族の物語は、懐かしくも、どこか切ない。イラストは、コイヌマユキによる描き下ろし作品。
この記事を書いた人
短歌/丸山朱梨(まるやま・あかり)
1978年、東京都生まれ。歌人。「未来短歌会」会員。小学校5年生の息子がいるシングルマザー。https://twitter.com/vermilionpear

小説/木滝りま(きたき・りま)
茨城県出身。脚本家。小説家。自称・冒険家。大学生の息子がいるシングルマザー。東宝テレビ部のプロットライターを経て、2003年アニメ『ファイアーストーム』にて脚本デビュー。脚本を担当したドラマ『運命から始まる恋』がFODにて配信中。https://www.and-ream.co.jp/kitaki-rima
イラスト/コイヌマユキ(こいぬま・ゆき)
1980年、神奈川県生まれ。イラストレーター。多摩美術大学グラフィックデザイン学科非常勤講師。書籍の装幀やCDジャケットなど多方面で活躍。「Snih」(スニーフ/“雪”の意味)として雑貨の制作も行う。https://twitter.com/yukik_Snih