いつもねむくなる埋めた場所に来ると

気がつくと掃除をしてきれいになった場所でそのままねむりこんでいることが多い。春もよくねむっていたが、秋になってねじをはずしたようにもっとねむりこむようになった。締め切ったムーミンハウスみたいに音も無いしずかな部屋で真夜中とつぜん起きることもある。

「徹子の部屋」で南野陽子さんが、コロナになっても生活は特にそれまでとは変わらなかったんです、ふだんから家にいるのが好きで左からねむったり右からねむったりしていたんです、と話していた。

ゆうじんは霧につつまれて朝も夜もねむってるといっていた。ここはまるでムーミン谷だと。ともかくすごい霧なんだ、を何度か繰り返した。ここの霧を共有してほしい。

片付いた部屋で、しつの違うもうふを何枚か用意して、左からねむったり右からねむったり、をじぶんのねむりに取り入れながら、またねむりこんだりしていく。わたしはいつもぽんこつで、すごくしずかだと思う。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター