星は星に会いに行く。それはうそではない。

ポン・ジュノさんのはじめての長編映画『ほえる犬は噛まない』を観た。

とてもだめなひとや少しまずいひと、ものすごく元気なひと、なぜかこんなわたしを応援してくれるひとが出てくる。わたしはなんでもない道を凄まじい声援をバックに走ったりもする。明日はないかもしれないが、今がある。わたしはしょうもないことのために今命を賭けて走ってる。そういう世界観。

『ほえる犬は噛まない』はとてもだめなひとの顔にきらきら光があたるシーンがある。まぶしそうにする。わたしはだめなにんげんだともわかっている。切り抜けたこともわかってる。これからまだこの人生で生きていかなきゃならないこともわかってる。逃げたし、嘘もついた。でも光がすごく顔にあたってくる。それはうそではない。

そのシーンがとてもよかった。よかったよなあと思いながら外を散歩していたら、自転車の後ろにのせられたこどもがわたしを指さしながら「ドラえもん」と言ってそのまま運ばれていった。母親が「だめでしょ」と言ったようなきもする。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター