週刊もともと予報
－ことばの風吹く－ ／ 12月9日

苺の風　あなたは少しうなずいた

苺と風ってふだんであうことがないよねえ、とひとと話していた。でも、ときどきであうんでしょ、やっぱりであうんだよ、どこかで、苺も、風に、そういうもんなんでしょ、とそのひとはいった。やっぱりそう思いますよ。中身がないこと話してるかもしれないけれど、いつか、苺は風に出合うんだって。それはわたしたちの話をしている、ともいった。そうして少しうなずいた。わたしはときどきそういう人生にかかわるようなふっとした話をひとからきくことがある。わたしは正直うまく生きられていないけれど、家に帰ってから、買ったばかりの皿を洗いながら、苺は風にであうこともありますよいつか、ということばをかんがえたりしている。苺の風が吹く、といういいかたもしていた。

『バームクーヘンでわたしは眠った　もともとの川柳日記』（春陽堂書店）柳本々々(句と文)・安福　望(イラスト)

2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報　ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
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