あのユニコーンはのらのユニコーンね

だいじなひとにあうのでとてもきんちょうしていたら、友人が、ユニコーンの話をしにゆくつもりでいったらいいんだよ、そうしてあなたが無事ついたらユニコーンの話をそのひとに伝える、わたしはこんなユニコーンを見ました、朝でした、霧がすこしでていました、恋人と別れたばかりでした、わたしは息をするユニコーンの鼻にすこしふれてみようとしていました、って、話を伝えたら、ちゃんと終わったきもちで帰ってきたらいいんだよ、と言われて、そうか、ユニコーンの話をしにゆこう、というきもちでゆけばいいんだね、と思って、きんちょうが少しほぐれたきがして、ありがとう、とわたしは言った。いいのかね、わたしで、と思ったけれど、ユニコーンなあ、草や霧なあ、というきもちで。

おれはユニコーンをまだいちどもみたことないんだけれど、とおもった。ときどき、そのことを、なんどもなんども、おもう。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター