風にさわったままねむる

「火星の音聞いた?」と友だちが言うので、どうしてそんな詩的なことを言うのだろう、と思ったら、NASAが火星の音を公開したとのことだった。

「“初めて録音された火星の音で風の音”だったんだって」
「星の音は風の音だったんだ」
「みんな毎日聞いているのが星の音だったんだよ」
「今も星の音がすごいよ」

〈初めて録音された火星の音で風の音だ〉って川柳みたいだなと思った。録音された詩は空からやってきて、電話からもやって来る。詩は今外で、星の音です、と名指しされて、吹いている。外を見ると、星の音によって髪がすごいことになっている女の子がいる。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター