青い犬ふっとすこしのえいえんになる

こないだほんやさんにいたときに、ふっと、ひとってわかりあえるもんなのかもしれないなあとおもった。わかりあえる。ふだん一人で生きていてぜんぜんかんがえないことばだった。でもさいきんそうおもう経験もあった。

「でもほんとわかりあえるってあるんだなあとおもうよ」「きゅうになに?」

「うん、それはなんか、時間とか空間とかかんけいなく、そのときその場にいたひとたちと今だけが浮き上がってくるかんじ、未来なんかも関係なくて、話が深い場所にいったとしても、このあとこれから仲良くしていきましょうね、とかそういうことでもないの。そのとき突然一瞬わかりあって、もう会わないかもしんないけど、でもわかりあってしまう。あかちゃんの話をとつぜんして、その日がおわるまえにわかれてしまう」

その日だけがふっとすこしのえいえんになるかんじ。もう思い出さないかもしれないけれど、カレンダーとかもかんけいなく。

ときどきわたしは、お世話になりました、と言ってあたまをさげることがある。あたまをさげるとき、ひとのからだのつごうじょう、あるいは家に帰らなくてはならないから、もういちどさげたあたまをあげなければならないが、あたまをあげると、たいてい目の前でひとは、ほほえんでいる。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター