あの星は豆ごはんだったんだね

川合大祐さんの『スロー・ワールド』出版記念イベントに呼んでいただいた。

アンソロジー『はじめまして現代川柳』の話になったときに、川合さんがふっと、いつも川柳はその日はじめて川柳をつくるかのようにつくるんじゃないですかね、と言った。だからどこかでいつも、現代川柳はじめまして、というようなゼロからつくるもの。

ああ。いつもこの星にふわっと降りたったひとのように川柳をつくる、ってことなんですかね、とわたしも言った。

なんだかすこし、あかちゃんってなんだろう、って話すことに川柳はちかいのかなと思った。わたしたちは赤ん坊について話し合っていたのだろうか。あかちゃんがはじめて風にふれたとき、風だとおもうのかどうか、風ってなんだろう、とか。風についてはじめて答えること。話すこと。

『2001年宇宙の旅』の真っ黒な宇宙に浮かび続ける巨大な赤ちゃんのことを思い出しながら、でんしゃに乗って、わたしは帰った。

  いつの日が銀河の鳥を捕る日なら──  川合大祐(『リバー・ワールド』)


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター