柏木 哲夫

第7回 孫ネタ川柳

 正式な分類かどうかはわかりませんが、川柳仲間では「孫ネタ」という言葉があります。子どもの動作や言葉は結構面白く、川柳になります。例えば
  入れ歯見て目も外してとせがむ孫
 この川柳は私の作ではないのですが、文句なしに面白いですね。私にも3人の孫がいますが、それぞれ個性的で、笑わせてくれます。
 初孫が生まれた時は流石にうれしくて、飽かずにながめていました。そんな時にできた川柳
  ウンチだな赤ちゃん急に真面目顔
 不思議なことに赤ちゃんはウンチの時には必ず真面目な顔になります。笑いながらウンチをする赤ちゃんはいません。
 もう一つ気づいたことがあります。子どもはオシッコを知らせる時に、なぜか偉そうな口調になるのです。
  オシッコとさも偉そうに告げる孫
 少し前から娘夫婦と孫3人が同居することになりました。老人2人の静かな生活から総勢7人の大家族になりました。夕食の時には皆んなが参加できるクイズコーナーや質問コーナーがあります。先日の質問コーナーの時、小2の次男が非常にユニークな答えをしたので紹介したいと思います。質問は「人間の身体にはいろんな臓器があります。どれになりたいか答えて、その理由も言ってください」というものです。中1の長女は「心臓」、理由は「全身に血液を送る大切な仕事でかっこいい」というもの。小5の長男は「胃」、理由は「いろんなものが入ってくるので楽しい」。次男の答えは「股関節」。理由は「半ズボンで走っている時、ズボンの裾から風が入ってきて、股関節のあたりがとても気持ちが良かったから」。
 小2が股関節という言葉を知っていたということと、その理由のユニークさに感動。やや「ジジ馬鹿」の要素もありますが。
 子育てには苦労がつきものです。予想とは違う展開をするのが子育てだと思っておくほうが安全(?)かもしれません。親の苦労が滲み出ている川柳を紹介します。
  甘かった子ども3人すね2本
 子どもは物の値段を簡単に無視します。親はそれにうまく対処しなければなりません。例えば
  松茸はまずいものだと子に教え
 というような工夫が必要です。いずれにしても、子育て、孫育ては一筋縄ではいきません。
 まさに
  子育てはさじを投げたり拾ったり
 ということになります。むしろ「思い通りにならない」というのが子育ての原則かもしれません。「正義」を愛する人間になってほしいという親の夢が打ち破られるのが世の常かもしれません。
  犯人の名前に親の夢をみる




『柏木哲夫とホスピスのこころ』(春陽堂書店)柏木哲夫・著
緩和ケアは日本中に広がったが、科学的根拠を重要視する傾向に拍車がかかり、「こころ」といった科学的根拠を示せない事柄が軽んじられるようになってきた。もう一度、原点に立ち戻る必要性がある。
緩和ケアの日本での第一人者である著者による「NPO法人ホスピスのこころ研究所」主催の講演会での講演を1冊の本に。


この記事を書いた人
柏木 哲夫(かしわぎ・てつお)

1965年大阪大学医学部卒業。同大学精神神経科に勤務した後、米ワシントン大学に留学し、アメリカ精神医学の研修を積む。72年に帰国後、淀川キリスト教病院に精神神経科を開設。日本初のホスピスプログラムをスタート。93年大阪大学人間科学部教授に就任。退官後は、金城学院大学学長、淀川キリスト教病院理事長、ホスピス財団理事長等を歴任。著書に『人生の実力 2500人の死をみとってわかったこと』(幻冬舎)、『人はなぜ、人生の素晴らしさに気づかないのか?』(中経の文庫)、『恵みの軌跡 精神科医・ホスピス医としての歩みを振り返って』(いのちのことば社)など多数。