はぐれないように毛布をかけている

「なんだかそう思ったんだけれど、こないだ『スター・ウォーズ』のボバ・フェットのことを考えていて、あんなにかっこよかったひとが悲鳴をあげながら最後にしんでいった、世界のちゅうしんの穴ってね、ずっと、そのボバ・フェットがひめいをあげ、てあしをばたばたさせながら、おちていったあのしゅんかんにあるきがする。きがつくまえに、ほんとうになってしまったこと。だれも予想しなかったし、けれどいまとなってはもう直しようがない。たびたびあれはほんとうだったのかなと手をやすめてふりかえる。ねむるまえやひとと会うまえにふりかえる、そういうところに世界の中心があるようなきがしているんだけれど」

「ふーん、そう」

「世界のちゅうしんってそういうすてきだったはずの場所なのに、ふっとまがぬけて、だから、ひとがきになって、たびたびあれはなにかのまちがいだったのかなって胸に手をあてて、ふりかえる、そういう場所だとおもうんだけれど」

「ボバ・フェットはなんか助かったらしいよ。でたらしい」

「お」


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター