光はうとうとする銀杏

とぎれとぎれにねむっていたら、テレビからこんな話がきこえた。

「光の速さと、あなたがわたしの胸まで飛び込んでくる速さは、どう関係していると思いますか? 光のなかでは、みんなおなじはやさとうごきなんですよ。びょうどうなんです。かくさがないんです。みんなおなじはやさでむなもとにとびこんでゆく。いちおくぶんのいちびょう遅れて」

みょうにこころにのこって、次の日、ひかりのなかではみんなおなじはやさでうごく、と繰り返した。誰が話していたんだろう。やさしい声のひとが、やさしい声のききてに話していた。きみのもとにとびこんでゆくことやそれにかかわる光のはやさについて考えながら、光っぽいおでんを食べた。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター