時「         」苺

「何百万の物事が何もかも消え失せて、残ったのがカリフラワーについての二言三言だなんて、とても不思議。」とバージニア・ウルフの『ダロウェイ夫人』に書いてあった。

わたしはなんとなく、ニシノユキヒコのとめどない、宇宙の、愛の、いきさつの、せかいを思い出した。

  「宇宙って、広がりつづけてるの」「外側には、きっと、なにもないんだよ」
 (川上弘美『ニシノユキヒコの恋と冒険』)

でも、なんとなく、このふたり、西野くんとわたしは、宇宙の外に、カリフラワーについての二言三言がのこって、それがえいえんにわすれられないことをしってたんじゃないか。宇宙の外にはカリフラワーについての会話がのこる。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報 ことばの風吹く』の中から、104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター