星 ぜんいんねむってるんだよ

  おやすみなさい。これはおやすみなさいからはじまる真夜中の手紙です
  穂村弘『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』

というおやすみなさいのてがみをめぐる歌があるけれど「おやすみなさい。はやくねむってください」という手紙をもらったことがある。
今考えてみると、はやくねむれ、なんてへんなてがみだよねと思う。なぜそんなにわたしをねむらせたいのか。
童話で、お菓子の家ではしゃぐヘンゼルとグレーテルに、はやくねむってくれないか、というならわかるが、私に、はやくねむれ、といったところで、この世界にいったいなんのメリットが、と思う。だれが、なんのために、なにをおもって。
が、にもかかわらず、おやすみなさい。という手紙は、すこしすてきだ。おはようやさようなら、よりはいい。ねなよ、のてがみは。


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この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター