かつて恩を受けた女を捜して、渡世人は歩き続ける。
あのとき女が恵んでくれたものを返す為に──。

戦後、数多の大衆小説を刊行し、池波正太郎・司馬遼太郎生誕100年を前に復刊を果たした≪春陽文庫≫。
2024年7月の新刊、笹沢左保『地獄をわらう日光路』のご紹介です。

『地獄を嗤う日光路』

『地獄を嗤う日光路』表紙イラスト

かつて行き倒れたときに助けてくれた女・お染を捜して旅を続ける、凄腕の渡世人・小仏の新三郎。長旅で傷んだ旅装束に青黒い病人の顔付き、たびたび起こる心臓発作に苦しみながら、あのとき恵んでくれた2両の小判と銀のかんざしをお染に返すこと、それだけを生きる目的に歩み続ける。
道中で行き合った老人と孫娘。5人の乱暴者が村に居座り無理難題を要求するので追い出してほしいという。そして、その5人組と一緒に、お染という女がいるというのだ──
表題作のほか、「背を陽に向けた房州道」など全4作品、新三郎の旅路を描く異色の股旅小説です。
『地獄を嗤う日光路』(春陽堂書店)笹沢左保・著
本のサイズ:A6判(文庫判)
発行日:2024/7/23
ISBN:978-4-394-90490-8
価格:1,100 円(税込)
著者紹介
笹沢 左保(ささざわ・さほ)
昭和5(1930)年、神奈川県横浜市に生まれる。子どもの頃より探偵小説を愛読する。昭和27(1952)年、郵政省簡易保険局に勤務。初長編『招かれざる客』が江戸川乱歩賞次席になり、本格的な小説家デビューを果たす。昭和36(1961)年、『人喰い』で第14回日本探偵作家クラブ賞を受賞。昭和45(1970)年『見返り峠の落日』で時代小説に進出。翌年、「木枯らし紋次郎」シリーズがテレビドラマ化され、一大ブームを巻き起こす。推理小説、時代小説の両方で活躍。平成14(2002)年死去。