言い方をまちがえ花が増えていく

『今井杏太郎全句集』をもらった。読んでみると、世界ってこんなに微妙なグラデーションがあったんだとおどろかされる。

  老人と老人のゐる寒さかな  今井杏太郎

老人と老人のあいだのわずかなちがい。それにきづいている。

この『全句集』の栞文で、俳人の鴇田智哉さんがこんなふうに書いている。

 言葉、というか、言葉が示す概念に、杏太郎はいつも興味があった。……言葉をとおして、何かについて考えること

「老人」ということばの奥にまだ「老人」がいる。俳句はそのことばの奥のちょびっとずつのちがいの世界にきづく。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター