近年注目が集まり、日常の中でより身近になってきた「短歌」。春陽堂書店でも「短歌」にまつわる書籍を出版しています。
ここでは、そんな春陽堂書店がお届けする「短歌の世界」をご紹介。
まずは、7月の新刊『現代短歌版百人一首 花々は色あせるのね』 著者・東直子さんに本の見どころなどを伺いました。


——『現代短歌版百人一首 花々は色あせるのね』の見どころ
百人一首の解説や訳はいろいろ出ていますが、短歌の形になった口語訳は、そんなに多くはない印象があります。
この本は、私の翻訳した現代短歌から始まって1ページに1首載せているので、まず現代短歌版の短歌をじっくり味わって、それから原作に書かれている意味の重なりや技巧などを解説で楽しんでいただければと思います。
——『現代短歌版百人一首 花々は色あせるのね』収録の自身で訳した中で特に好きな歌
表題にした、小野小町の
 花々は色あせるのね長い雨ながめて時は過ぎゆくばかり
(元の歌・花の色はうつりにけりないたづらに我が身世にふるながめせしまに
は気に入っています。
この歌は有名なので暗唱できる人も多いと思いますが、意味もわかりやすく、この鼻歌を歌うような柔らかい感じを踏襲しつつ、現代の言葉を生かすようにしました。
「ながめせしまに」の「ながめ」には「長雨」と「眺め(物思い)」の2つの意味があるので、そこはちゃんと入れた方がいいのかなと思って入れました。「長い雨眺めて」と2つ意味を入れると、それがリフレイン的な効果を出して、口語の歌ならではの新しい言葉の響き合いも生まれて、これは楽しかったですね。
——昨今の「短歌ブーム」について
「短歌ブーム」と呼ばれて、確かに本屋さんでたくさんの歌集が並ぶようになったし、Twitterで短歌をつぶやく人もすごく多くて、私は長年短歌をやってきたのでとても嬉しく思っています。
ブームって言うと、いつか終わってしまうもののように聞こえてしまいますが、私はブームというより、現代短歌がいろいろな人の生活の中に定着してきたんじゃないかなと思うので、裾野が広がったところで、さらに一人一人、自分のやりたい方向性で短歌を作ったり、好きな短歌をさらに読んで深めていってもらえたらと願っています。

東直子さん(右)、娘の東かほりさん(デザイナー・映画監督/本書装丁担当)

★東直子さんのインタビュー記事を後日公開予定です(春陽堂書店編集部)

『現代短歌版百人一首 花々は色あせるのね』

『現代短歌版百人一首 花々は色あせるのね』(春陽堂書店)東直子・著
本のサイズ:四六判/208頁
発行日:2023/7/3
ISBN:978-4-394-98007-0
価格:1,870 円


《電子版》

『短歌の時間』

東直子が選んだ711首!
雑誌『公募ガイド』選歌欄6年半の人気連載を書籍化。鳥、窓、恋人、袋、ロボット、宇宙、スポーツ……などのテーマ詠・題詠から、人気歌人・東直子が特選、秀作、佳作を丁寧に選びました。確かな選歌眼、詩情ゆたかに歌に寄り添うあたたかな選評。短歌好きの人も詠みはじめたい人にも絶好の一冊です。お蔭様で現在第3版!

『短歌の時間』著者・東直子さんからのメッセージ

——『短歌の時間』刊行後の反響
入門書的に楽しんだという方が多く、「創作する意欲がわきました」とか「公募の作品のレベルの高さを再認識した」「1つの題でたくさんの人の歌が載っているので、同じ言葉からいろいろな発想ができるということをわかって、それがすごく楽しかった」という声もありました。短歌のコラムのようなものを載せて、それが面白いと言ってくださる方も多かったです。
——『短歌の時間』の見どころ
1つの題をいろいろな切り口で読めるところでしょうか。短歌の発想の自在さや自由な感じを味わえます。
コラム部分には短歌のコツみたいなものを書いているので、ある程度短歌を読んできて、さらに一歩深めていくときに参考になるんじゃないかなと思います。
短歌の音楽性、素材への切り込み方、余韻の出し方など、具体的な例として歌人の作品をテーマごとに引用していて、私の好きな作品ばかりなので、その引用歌を読むだけでも楽しいのではないでしょうか。

『短歌の時間』(春陽堂書店)東直子・著
本のサイズ:四六判/並製
発行日:2022/3/30
ISBN:978-4-394-98001-8
価格:1,760 円


《電子版》

『巴里うたものがたり』

パリで、好きなことをする
歌人・水原紫苑が長年の夢だった旅へ。
オペラ座や美術館、ジェラール・フィリップゆかりの地や大好きなカテドラル巡り、カフェ通い、ソルボンヌ大学文明講座への留学。
帰りたくない日々を写真と短歌で綴る80日の旅日記エッセイと新作短歌119首も収録。
『巴里うたものがたり』著者・水原紫苑さんからのメッセージ

——『巴里うたものがたり』の見どころ
パリのホテルやカフェの人たちとだんだんに気持ちが通じ合ったこと、可愛いトビイ(カフェの看板犬)のこと、そしてジェラール・フィリップ(仏の俳優)ゆかりの友人たちとの出会いです。
——『巴里うたものがたり』収録短歌の中で、とくに好きな歌1首とその理由
 薔薇を挿す花瓶に氷入るるごとわが生涯に巴里を與へよ
何となく作ったのですが、引いてくださる方が多い歌なので。
『巴里うたものがたり』(春陽堂書店)水原紫苑・著
本のサイズ:四六判/並製
発行日:2023/1/30
ISBN:978-4-394-98005-6
価格:2,090 円(税込)


《電子版》

『言葉の還る場所で ―谷川俊太郎・俵万智対談集―』

詩人・谷川俊太郎と歌人・俵万智。表現者二人が、それぞれ在住の東京と宮崎という距離を超えてオンラインで語り合った対談。
詩と短歌の表現上の相違点、言葉と社会のつながり、言葉と音楽、詩や短歌の翻訳について思うこと、俵万智が答える谷川俊太郎伝説の「33の質問」などを収録。

『言葉の還る場所で ―谷川俊太郎・俵万智対談集―(春陽堂書店)谷川俊太郎、俵万智(著)
本のサイズ:A5判/変型/並製
発行日:2022/ 7/5
ISBN:978-4-394-90417-5
価格:1,760円(税込)


『念力レストラン』

蜷川幸雄、糸井重里ら各界のクリエーターがその才能を絶賛し、 牧水・短歌甲子園審査員を務める笹公人氏のバラエティブック。
短歌250首+和田誠、大林宣彦との想い出を綴ったエッセイなど12本+小説3篇を収録。


『念力レストラン』(春陽堂書店)笹公人・著
本のサイズ:四六判/上製本
発行日:2020/8/4
ISBN:978-4-394-99004-8
価格:2,420 円(税込)


《電子版》