エピローグわたし以外は眠りこむ

水木しげるに「テレビくん」というテレビの中を出たり入ったりする不思議な少年の話がある。顔は鬼太郎そっくりで、しましまの半そでシャツもちゃんと着ている。

宮沢賢治の「風の又三郎」は風のなかを出入りしていたが水木しげる世界ではテレビを出入りしているのがおもしろい。でも、又三郎がやってきた日の強い風も、昭和のテレビの砂嵐も、どこか通じるものがある。

混沌としていて、ノイジーで、いろんな情報をふくんだ季節の風ように多くのチャンネルがテレビではうつしだされてゆく。

テレビって、風にちかいのかもしれない。

この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)1982年、新潟県生まれ 川柳作家
安福 望(やすふく・のぞみ)1981年、兵庫県生まれ イラストレーター