大東亜共栄圏構想を掲げていた昭和16年、太平洋戦争前夜の厳しい言論統制下で
連載されていた小栗虫太郎の長編小説発見! 80年の時を経て初刊行!!

小栗虫太郎は、横溝正史や江戸川乱歩の登場した雑誌『新青年』でデビュー。
『黒死館殺人事件』によって当時の探偵文壇に確固たる地位を築き、現在も『ドグラ・マグラ』『虚無への供物』と並ぶ三大奇書と称されています。その小栗の見慣れない連載小説が発見され、専門家の調査により“未刊行作品”と確認されました。
未発表長篇小説『亜細亜あじあはた』は、独自の文体、ペダントリー、ミステリー趣向は影をひそめ、従来の小栗虫太郎観を激変せしめる通俗的な恋愛小説です。歿後74年にして出版される異色作ですが、本書の刊行は、戦時下の探偵作家たちの苦労とともに、昭和における国家と政治、文学を問い返す機会にもなるでしょう。

『亜細亜の旗』ストーリー

日中の架け橋たらんと上海の病院に勤務する青年医師・峰島譲治は、一時帰国の船上で運命の女性・暁子と出逢う。だが二人の恋は、周辺の思惑が複雑に絡み合って定まらない。大東亜共栄圏建設によって雄飛しようとする日本の姿を、主人公に仮託した小栗虫太郎の国策小説発見! 『黒死館殺人事件』をしのぐ一大長篇、ここに登場!!

『亜細亜の旗』(春陽堂書店)小栗虫太郎・著
大東亜共栄圏構想を掲げていた昭和16年、太平洋戦争前夜の厳しい言論統制下で連載されていた小栗虫太郎の長編小説発見! 80年の時を経て初刊行!!
発見者の山口直孝氏(二松学舎大学)の解説のほか、子息・小栗宣治氏の「小伝・小栗虫太郎」を収録。
本のサイズ:A5判/函入・並製
ISBN:978-4-394-90394-9
価格:4,950 円(税込)

著者紹介
小栗虫太郎(おぐり・むしたろう)
1901 年(明治34)3 月14 日、東京神田旅籠町に生まれる。本名・栄次郎。京華中学校卒業、正則英語学校高等科にも通学。1933 年(昭和8)、『完全犯罪』(『新青年』7 月号)を発表、本格的な創作活動に入る。『黒死館殺人事件』によって日本探偵小説史上に確固たる地位を築いた。他の作品に『白蟻』『オフェリア殺し』『紅殻駱駝の秘密』『魔童子』『二十世紀鉄仮面』などがある。第4 回直木賞候補。
1941 年(昭和16)、陸軍報道班員としてマレーへ出征。1946 年(昭和21)2 月10 日、脳溢血で急逝。