月「運命ってはやいの?」

つつじの蜜をはじめてすいたくなった。気持ちいい風が吹いていた。

「席替えで、がらがらと向こう側から机と椅子をひきずってやってくるこれから隣の席になるひとをみるのが好きだったって話、したことあったっけ? そもそも席替えがとてもすきなんだった。わすれてたけど。このままわすれててもよかったけど。これから長いあいだずっとそのひとといっしょになるのに、でもそれはすごくたまたまで、いすをひきずるおとが教室中に今すごくしてて、まどがあいてて、風がふいてて、これからどうなるかわからなくて」

公園でベンチに座ってサンドイッチを食べましょうといわれて、ここに座りましょうよといわれる。どういうわけかやたら鳩が眠っている場所で少しゆっくりした場所だなと思ったけれど、ここにしましょうよ、もうここに、ね、といわれる。運命なんだなと思い、座る。わらいあう。

わたしたちには運命がおおすぎる、ということばが浮かぶ。サンドイッチはおいしかった。


『もともと予報』(春陽堂書店)柳本々々(句)・安福 望(イラスト)
2019年5月から好評連載中『週刊もともと予報-ことばの風吹く-』がすてきなポストカードブックになりました! 24綴りとなっております。1枚ずつ切り離して飾るもよし、大切な方へのお便りに使うもよし、当連載と併せてお楽しみください。


『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
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この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター