あしたあなたがうまれる パンとプリント

連絡帳ってなんだったんだろうね、という話になった。

「れんらくちょうってあれなんでも書いてもいいのかね。ともだちがいないこととか光のこととかくまのこととかね。あなたが今話してるあの歌っていうのはつまりあの歌のことでいいんだよね、って確認した日のこととか。てを離したら離れてしまう、一日中風船をもっていた日のこととか。これからはじまるものやおわるもの、風邪のとき届けたぱんとぷりんとのこととか、すきなかたちの手のこととか、なんでもかいていいのかね」

「なんでもかいていいのよ。なんでもれんらくしていいのよ、きっと。れんらくしたいときに」

「わあ。そんなものがこの世界にあったんだね。希望、ってひとこと書いてれんらくちょうを提出してもいいんだものね。れんらくちょうになにをかいてもいいし、そのれんらくちょうを提出する場所もちゃんとあった。そうしたければいつでもれんらくすることができた。つながれた」

わたしたちはれんらくちょうの話をつづけた。

「そうそう。そうよ。せっかくいきてきたんだしね」とそのひとが言った。「ぜんぶのかのうせいをれんらくちょうに書きたいよね。これからくるぜんぶのあしたのことも」とそのひとが言った。

「ほんとうに、そうだよ。そうおもう」とわたしは言った。

2018年の『今日のもともと予報』から始まり、2019年に『週刊もともと予報-ことばの風吹く-』となって毎週お届けしてきました同連載は今回が最終回です。
今までご覧いただき、誠にありがとうございました。またどこかでお会いしましょう!
※連載バックナンバーは引き続きご覧になれます。(春陽堂書店編集部)

『もともと予報』(春陽堂書店)柳本々々(句)・安福 望(イラスト)
2019年5月から好評連載中『週刊もともと予報-ことばの風吹く-』がすてきなポストカードブックになりました! 24綴りとなっております。1枚ずつ切り離して飾るもよし、大切な方へのお便りに使うもよし、当連載と併せてお楽しみください。


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この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター