この惑星にいつも置き去り
「いつもなにかにむかって走ってるあの非常口のみどりのひとはなにかいいぶんがありそうだよね。どういういいぶんをもってるとおもう?」と聞かれたことがあった。いいぶん。
さいきんたまたまおおたじゅんこさんの「みどりのひと」というラジオドラマを聴き返していた。「森でみうしなっては終わりだとおもっている。みどりのひとだから」ということばが流れてくる。
おおたじゅんこさんのラジオドラマは、いつもだれかがなにかをうしない、とりのこされていく。
ふうふが、おやこが、関係がはたんして、うしなっていく。みどりのひとも森に帰っていく。
「みどりのひとのいいぶんはわからないんだけど、あの走っているすがたって、みどりのひとがこの星の脱出口めがけてぼくたちを置いて走っていくすがたにみえない? みどりのひとからいつも置き去りにされているんだよ、この星に」
みどりのひとは走るだけでなく愛するひとにてがみをかくこともあった。てがみをかいたあとに走っている姿がグリーンに光っている。非常口、とそれは呼ばれている。
「あなた車にひかれやすそう」といわれたことがあった。
『もともと予報』(春陽堂書店)柳本々々(句)・安福 望(イラスト)
2019年5月から好評連載中『週刊もともと予報-ことばの風吹く-』がすてきなポストカードブックになりました! 24綴りとなっております。1枚ずつ切り離して飾るもよし、大切な方へのお便りに使うもよし、当連載と併せてお楽しみください。
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『バームクーヘンでわたしは眠った もともとの川柳日記』(春陽堂書店)柳本々々(句と文)・安福 望(イラスト)
2018年5月から1年間、毎日更新した連載『今日のもともと予報-ことばの風吹く-』が本になりました。365句の中から104句を厳選。
ソフトカバーつきのコデックス装で、本が開きやすく見開きのイラストページも堪能できます!
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┃この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞 安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞 安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター