この惑星にいつも置き去り

「いつもなにかにむかって走ってるあの非常口のみどりのひとはなにかいいぶんがありそうだよね。どういういいぶんをもってるとおもう?」と聞かれたことがあった。いいぶん。

さいきんたまたまおおたじゅんこさんの「みどりのひと」というラジオドラマを聴き返していた。「森でみうしなっては終わりだとおもっている。みどりのひとだから」ということばが流れてくる。

おおたじゅんこさんのラジオドラマは、いつもだれかがなにかをうしない、とりのこされていく。

ふうふが、おやこが、関係がはたんして、うしなっていく。みどりのひとも森に帰っていく。

「みどりのひとのいいぶんはわからないんだけど、あの走っているすがたって、みどりのひとがこの星の脱出口めがけてぼくたちを置いて走っていくすがたにみえない? みどりのひとからいつも置き去りにされているんだよ、この星に」

みどりのひとは走るだけでなく愛するひとにてがみをかくこともあった。てがみをかいたあとに走っている姿がグリーンに光っている。非常口、とそれは呼ばれている。

「あなた車にひかれやすそう」といわれたことがあった。


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この記事を書いた人
yagimotoyasufuku
柳本々々(やぎもと・もともと)
1982年、新潟県生まれ 川柳作家 第57回現代詩手帖賞受賞
安福 望(やすふく・のぞみ)
1981年、兵庫県生まれ イラストレーター